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漫画でおなじみ「パパ、このお店潰して」は現実社会で実行可能なのか?

ドラマや漫画、あるいはショート動画などで一度は見たことがあるでしょう。 接客態度が気に入らなかったり、自分の思い通りにならなかったりした時に、お金持ちのキャラクター(大抵はワカママなお嬢様)が放つあの一言。

パパ、このお店潰して!

その直後、電話一本で本当にお店が買収されたり、閉店に追い込まれたりする…という展開は、もはや「お約束」と言ってもいいクリシェです。 しかし、大人の視点で冷静に考えると、「それ、本当にできるの?」という疑問が湧いてきませんか?

今回は、この「パパ権限による店舗破壊」が現実社会において実行可能なのか、真面目に(そして少し野暮に)考察してみたいと思います。

パターン1:親がその「お店」のオーナーだった場合

これが唯一、現実的に実行可能なパターンです。 実はそのお店が「パパの会社」が運営している系列店だった、あるいはパパが個人的にオーナーを務めているフランチャイズ店だった、というケースです。

実行へのプロセス

  1. 娘から「店員の態度が悪い」とクレームが入る。
  2. オーナーであるパパが「けしからん!」と激怒。
  3. 即座に「閉店」あるいは「店長の更迭」を指示する。

現実的なハードル

「自分の持ち物だから壊すのも自由」に見えますが、現実には株式会社であれば株主への背任行為になりかねません。 一時の感情で黒字店舗を閉鎖すれば、会社に損害を与えることになります。 また、従業員を解雇するには日本の法律上、正当な理由が必要です。「オーナーの機嫌を損ねたから」という理由での即日解雇は、不当解雇として訴えられればまず負けます。

結果として、お店を潰すことはできても、その後に続く**「多額の違約金」「訴訟リスク」「社会的信用の失墜」**という代償をパパが支払うことになります。

パターン2:お店を買収して潰す(M&A)

お店が他人の持ち物である場合、「じゃあ買っちゃえばいいじゃない」という発想です。 いわゆる敵対的買収です。

現実的なハードル

これには途方もない壁があります。

  1. 相手が売ってくれなければ買えない: 非上場の個人店の場合、オーナーが「売らない」と言えばそれまでです。札束で頬を叩けば売るかもしれませんが、市場価値の数倍〜数十倍のコストがかかるでしょう。
  2. 時間とお金の無駄: たかが「娘の機嫌」を取るために、数億〜数十億円を動かす経営者がいるでしょうか?
  3. デューデリジェンス(資産査定): 買収には時間がかかります。電話一本で「はい、今からこの店はウチのものだ」とはなりません。

パターン3:テナントのオーナー権限を行使する

もしパパが、そのお店が入っている**ビルのオーナー(大家さん)**だった場合はどうでしょうか?

現実的なハードル

実は、日本においてはこれが一番難しいかもしれません。 日本の「借地借家法」は、借りている側(テナント)の権利が非常に強く守られています

正当な事由(建物の老朽化など)がない限り、大家さん側から一方的に「出ていけ(契約解除)」と言うことはできません。「娘が気に入らないと言っているから」という理由は、裁判所では100%認められないでしょう。

結論:できるけど、パパが破滅する

結論として、「パパ、このお店潰して」を現実で実行しようとすると、以下のようになります。

  • 物理的・権力的には:不可能ではない(自分の店なら)。
  • ビジネス・法的には:ほぼ不可能、あるいは割に合わない。

もし、電話一本で本当にお店を潰してくれるパパがいるとしたら、そのパパは「ビジネスのリスク判断ができない無能な経営者」か、あるいは「法律の通用しない裏社会のドン」のどちらかです。

どちらにせよ、そんなパパに育てられたお嬢様の将来が心配でなりません。 現実のお金持ちは、「敵を作るコスト」を誰よりも知っているからこそ、店員さんにも丁寧に接するものなのです。