私たちが毎日触っている「OS」って、そもそも何のために作られたんだろう。
当たり前すぎて疑問にすら思わないかもしれない。 でも、この問いを掘っていくと OSの本質が “人間とCPUの翻訳装置” だったことに気づく。 そして、その構造は誕生から今まで、驚くほど変わっていない。
今回は「OSはなぜ今の形になったのか」を起点にして、 生成AIでOSを作れるのか というSF的な妄想まで一気に駆け抜けてみたい。
OSは「人間がCPUと会話するため」に生まれた
まず根本の話をしたい。
コンピューターの心臓はCPUだけど、CPUが理解できるのは0と1の羅列だけ。 人間が「ファイルを開いて」と言っても、CPUにはまったく伝わらない。
この絶望的な言語の壁を埋めるために作られたのがOS だ。
OSの役割をざっくり分けるとこうなる。
- ハードウェア管理 :CPU、メモリ、ストレージなどの資源を整理して割り振る
- プロセス管理 :複数のアプリを同時に動かすための交通整理
- ファイルシステム :データを「フォルダ」と「ファイル」という人間に分かる形で見せる
- ユーザーインターフェース :マウスやキーボードの入力を受け取り、画面に結果を返す
つまりOSは 「人間の意図を機械語に翻訳し、機械の出力を人間語に翻訳する」二重通訳 みたいな存在。 この構造は1960年代のUNIXから2020年代のWindows 11まで、本質的には同じだ。
GUIが変わっても「骨格」は同じという事実
ここが面白いところなんだけど、グラフィカルなOSも中身はCLI(コマンドライン)で動いている。
Windows 11のきれいなデスクトップも、裏ではPowerShellやカーネルのコマンドが走っている。 macOSのDockも、その下にはUNIX由来のターミナルがいる。
見た目のレイヤーがどれだけ進化しても、骨格は「コマンドを受け取って実行する」という1970年代の設計思想そのまま なんだよね。
これってすごいことだと思う。 50年以上前のアーキテクチャが今でも通用しているということは、「人間がコンピューターを操作する方法」はもう 正解が出ている ということかもしれない。
未来のUIが変わっても、OSの姿は変わらない説
ここからは私の持論になるけど、聞いてほしい。
たとえば脳内にチップが埋め込まれて、視界にOSが直接表示される未来が来たとする。 SFでよくある立体ホログラムのUIが実現したとする。
それでも、表示されるものは今のOSと大差ない と思っている。
なぜなら「人間が操作できるインターフェース」が前提条件になる以上、人間の認知能力に最適化されたデザインにしかならないから。
- フォルダとファイルの概念
- ウィンドウの重なり
- ボタンを押す → 結果が返る
この構造は、人間の脳が 「こうでなければ理解できない」 と断定しているようなものだ。 SFで描かれる「超未来的なUI」も、結局は人間が想像できる範囲のハイテクでしかない。

生成AIでOSは作れるのか? ビル・ゲイツにCursorを渡したら
さて、ここからが本題の妄想パート。
独自のOSを生成AIで作ることは可能なのか?
結論から言うと、 小規模な専用OSならすでに射程圏内 だと思う。
たとえばIoTデバイスの制御用OS。センサーの値を読み取って、特定の条件でアクチュエーターを動かす。 こういう「目的が明確で、スコープが狭い」ものなら、AIコーディングで十分にカバーできる。
でも、 Windows級のフルスケールOSとなると話は別 だ。
ここで考えなきゃいけないのが、OSは ソフトウェアだけで完結しない という問題。
- チップセットごとのドライバ対応
- 数千種類のハードウェアとの互換性
- セキュリティの多層防御
- 30年分の後方互換性
これらは「コードを書く」だけでは解決しない。 ハードウェアメーカーとの交渉、規格の策定、エコシステムの構築 という、そもそもAIが介入できない領域が巨大すぎる。
もしビル・ゲイツにAIエディタがあったら
ここで一つ、ありえないパラドックスを考えてみよう。
1975年のビル・ゲイツに、現代のAIエディタ(CursorとかCline)を渡したらどうなるか。
まず、Altair 8800用のBASICインタプリタ。 ゲイツとポール・アレンが数週間かけて書いたこのコードを、今のAIなら 数時間で生成できる はず。
じゃあWindowsの開発はどうか。
正直、初期のWindows 1.0レベルなら AIで爆速開発が可能 だと思う。 GUIのレンダリング、イベントハンドリング、単純なファイルマネージャ。 これらは「書くべきコードが明確」だからAI向きだ。
でも、Windows 95以降の「生態系としてのOS」になると、AIだけでは無理。
OSが偉大なのは、コードの量ではなく「全世界のハードウェアメーカーを巻き込んだエコシステム」を構築したこと だから。 ここはAIには代替できない、人間の政治力と交渉力の領域。
OSの本質は「人間の限界をコードで拡張すること」
最後に、OSについて考えて見えてきた持論をまとめたい。
OSが50年以上も「同じ骨格」で生き残っている理由。 それは 人間の認知構造に最適化されたインターフェース だからだと思う。
AIがどれだけ進化しても、OSの「姿」は大きく変わらない。 変わるのは裏側の効率であって、人間の目に見える部分は「人間が理解できる形」に収束する。
OSとは結局、「人間の脳の限界」をコードで拡張する装置 なんだと思う。
だからこそ、脳の構造が変わらない限り、OSの基本設計は変わらない。 そして、それは悪いことじゃない。 「完成されたものは変わる必要がない」 ということだから。
もし自分でOSを作りたくなったら、まずは「人間にとって一番自然な操作とは何か」を考えるところから始めるのがいいかもしれない。 技術の前に、人間を知ること。それがOS設計の第一歩だ。
