災害は突然やってきます。地震、台風、豪雨、火災など、予測できない災害によって家に被害を受けた時、多くの人はまず片付けを始めようとします。
しかし、実はその前にやるべきことがあります。それが**「罹災証明書」の申請**です。
この書類は、被災者支援金や義援金、税の減免、保険請求など、様々な支援を受けるための「パスポート」のような存在です。知識がないと、本来もらえるはずの支援がもらえなくなる可能性があります。
罹災証明書とは?
罹災証明書とは、災害によって建物や家財に被害を受けたことを、市町村が公的に証明する書類です。
この証明書があることで、以下のような支援を受けることができます。
- 義援金・被災者生活再建支援金: 被害の程度に応じて数百万円単位の支援金が支給される場合があります
- 税の減免: 固定資産税や所得税の減免措置を受けられます
- 保険請求: 火災保険や地震保険の請求時に必要です
- 仮設住宅入居: 住居を失った場合の仮設住宅入居の資格を得られます
- 各種ローン優遇: 住宅ローンや各種ローンの返済猶予や減額措置を受けられます
つまり、罹災証明書は被災後の生活再建において、非常に重要な書類なのです。
【最重要】申請の3ステップ
罹災証明書の申請は、大きく3つのステップで構成されています。特に最初のステップが重要です。

Step 1: 写真撮影(片付ける前!!)
これが全てです。 片付けてしまうと「証拠隠滅」扱いになり、適切な判定が受けられなくなる可能性があります。
被害を受けた建物や家財の写真を、片付けを始める前に必ず撮影してください。
撮影のコツ
写真撮影は、以下のポイントを押さえて行います。
- 遠景(全景): 建物の4方向から全体を撮影します。被害の全体像を把握できるようにします。
- 近景(被害箇所): 被害を受けた箇所を寄りで撮影します。ひび割れ、破損、水損など、具体的な被害状況が分かるようにします。
- 複数枚撮影: 同じ箇所でも、角度を変えて複数枚撮影しておくと安心です。
スマートフォンで撮影する場合は、日付と時刻が記録されるので、そのまま保存しておけば問題ありません。
Step 2: 自治体へ申請
写真撮影が完了したら、お住まいの市町村に罹災証明書の申請を行います。
申請方法は、自治体によって異なりますが、主に以下の方法があります。
- 窓口申請: 市役所や区役所の災害対策課など、担当窓口に直接申請します
- 郵送申請: 申請書類を郵送で提出します
- オンライン申請: マイナポータルなどのオンラインサービスを利用して申請します
申請時に必要な書類は、自治体によって異なりますが、一般的には以下のような書類が必要です。
- 罹災証明書交付申請書
- 被害状況を確認できる写真
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 印鑑
申請書類は、自治体のホームページからダウンロードできる場合が多いです。
Step 3: 調査・交付
申請後、市町村の調査員が現地調査に訪れます。
調査時には、以下の点を確認されます。
- 建物の構造や築年数
- 被害の程度や範囲
- 被害を受けた箇所の状況
調査員が来る際は、立ち会いを推奨します。被害状況を直接説明できるため、より正確な判定が受けられます。
調査後、被害の程度に応じて以下のような判定が行われます。
- 全壊: 建物の主要構造部の損害が50%以上
- 大規模半壊: 建物の主要構造部の損害が40%以上50%未満
- 半壊: 建物の主要構造部の損害が20%以上40%未満
- 一部損壊: 建物の主要構造部の損害が20%未満
判定に不服がある場合は、再調査を依頼することも可能です。その際は、Step 1で撮影した写真が重要な証拠となります。
判定区分と支援の差
罹災証明書の判定区分によって、受けられる支援の内容や金額が大きく異なります。
例えば、被災者生活再建支援金の場合、以下のような支援が受けられます。
- 全壊・大規模半壊: 基礎支援金100万円 + 加算支援金(最大200万円)
- 半壊: 基礎支援金50万円 + 加算支援金(最大100万円)
- 一部損壊: 支援金の支給対象外となる場合が多い
このように、判定区分によって支援金額が数百万円変わることもあります。だからこそ、Step 1の写真撮影が命なのです。
適切な判定を受けるためには、被害状況を正確に記録することが重要です。片付けを急がず、まずは写真を撮影することを優先してください。
まとめ:知識も立派な防災
災害は突然やってきます。防災グッズを準備することも大切ですが、「知識」も立派な防災です。
罹災証明書の申請について知っておくことで、万が一の時に適切な支援を受けられる可能性が高まります。
特に、「スマホで写真を撮りまくる」ことだけは覚えておいてください。片付けを始める前に、被害状況を記録することが、その後の生活再建において非常に重要になります。
災害は予測できませんが、知識を身につけることで、被害を最小限に抑えることができます。ぜひ、この記事を参考に、万が一の時に備えてください。