面接官は「またか」と思っているかもしれません。
就職活動の定番質問「学生時代に力を入れたことは?」という問いに対して、「サークルのイベント運営です」と答える学生は、毎年、山のようにいます。
でも、ちょっと待ってください。
実は、イベント運営経験って、企業が欲しい「実践的な能力」の塊なんです。ただし、その価値を引き出すには、話す内容をしっかり設計する必要があります。
面接官が「またか」と思う理由
規模を競うナンセンスさ
「〇〇人を集めました!」 「予算は△△万円でした!」 「〇学年〇〇人の大規模イベントでした!」
こういった話をされると、面接官は心の中で「あ、この人は規模の大きさに価値があると思ってるんだ」と感じてしまいます。
しかし、企業のプロジェクトと比較すれば、学生イベントの規模なんて微々たるもの。 百人集めた学生イベントも、企業で千人規模のカンファレンスを企画する業務も、「スケール」が違いすぎます。だから、採用担当者は「規模の話」をされても、心に響かないのです。
「何をしたか」より「どう動いたか」を知りたい
面接官が本当に知りたいのは以下の点です。
- 企画段階で、あなたは何を考え、誰と相談し、どう決定したのか
- 準備段階で、何が課題で、どう解決したのか
- 実行当日、予期せぬトラブルが起きたとき、あなたはどう判断し、どう動いたのか
つまり、プロセスの中での「あなたの役割」と「思考」を見ているのです。
企業が本当に評価している:イベント運営のプロセス価値
イベント運営 = 一つの完全なビジネスプロジェクトサイクル
実は、学生イベント運営って、以下の流れを一度に経験できる最高の教材です。
- 企画フェーズ: 「何をするのか」を決定する思考プロセス、目標設定
- 準備フェーズ: 予算管理、人員配置、スケジュール立案、ステークホルダー調整
- トラブルハンドリング: 当日の予期せぬ事態への対応、リアルタイムでの判断
- 実行フェーズ: 計画の実装、現場での臨機応変な対応
- 振り返りフェーズ: 成功要因と失敗要因の分析
これ、まんま企業の仕事サイクルです。
企業が「段取り力」として求めているもの
採用担当者が「イベント運営経験」を聞いているのは、実は「段取り力」を見たいからです。
段取り力とは:
- 目標から逆算して、何をすべきかを整理する力
- 複数のタスクを並行管理する力
- チーム内での役割分担をしくむ力
- 問題発生時に素早く対応する力
これらは、営業、企画、マネジメント……どの職種でも必須のスキルです。
イベント運営を「武器」にするための話し方
避けるべき語り方:「規模自慢」
❌ ダメな例
「50人規模の新歓イベントを企画・運営しました。参加者から好評をいただきました」
これだけだと、「へぇ、頑張ったんだ」で終わってしまいます。
採用される語り方:「プロセス と トラブル対応」
✅ 良い例
「50人規模の新歓イベントを企画・運営したのですが、最大の課題は『限られた予算の中で、満足度の高い体験をいかに作るか』でした。
私は、先輩たちの過去のイベント予算表を分析し、『外注コストの削減』より『参加者の心理』を優先することにしました。具体的には、会場の演出にお金をかけるのではなく、参加者同士の交流機会を設計することに注力しました。
ただ、イベント当日、想定していた人数より30%多く参加者が来てしまいました。その時点で用意していた軽食が不足する事態に。私は、その時すぐに『食べるより交流を重視する方が良い』と判断し、軽食の提供方法を変更し、その分、全体をラウンドトークセッション形式に切り替えました。
結果、むしろ参加者からは『他の学生とたくさん話せて良かった』という評価をもらいました。この経験から、『最初の計画は指針に過ぎず、現場での柔軟性がいかに大切か』を学びました」
このレベルの語り方をされたら、採用担当者は「こいつ、単なる『やりました』じゃなく、思考して動いたんだ」と感じるはずです。
トラブル対応こそが、最高の証明
なぜトラブルの話が有効なのか
企業は計画通りに進む人よりも計画が崩れた時に対応できる人の方が、遥かに欲しいものです。なぜなら、現実の仕事は常にハプニングの連続だからです。
だから、イベント運営の話をするなら、「何が問題で、どう解決したか」を盛り込むこと。
具体的には:
- 当日、主要なメンバーが来られなくなった → どう役割分担を変えた?
- 会場の予約が突然キャンセルされた → 代替案をどう素早く見つけた?
- 予算が足りなくなった → どうやりくりした?
こういった「困難な状況での対応」こそが、採用担当者の心に刺さるのです。
結論:規模を誇るな、泥臭いプロセスを語れ
イベント運営経験は、ただのやったでは価値がありません。
重要なのは:
- 企画段階での思考 → なぜそれを決めたのかを説明できるか
- 準備段階での工夫 → 限られたリソースで、何を優先したのかを示せるか
- トラブル対応 → 計画外の事態で、どう判断したのかを語れるか
- 振り返り → そこから何を学んだのかを整理できるか
この4つを盛り込んで初めて、イベント運営経験は「企業が欲しい実践的なスキルの証明」になります。
もし面接で「学生時代に力を入れたこと」を聞かれたら、規模ではなく「プロセスと学び」を語ってください。それが、採用担当者の心を動かす本当の力です。