データセンターに原子炉をセット?電力不足を解決する「Kairos Power」を知りたい

AI時代の到来で、今以上に電気を使う流れが来ています。

「便利な世の中=電力で動くモノ」

この構図はこれからも変わることはないでしょう。

アメリカの広大な大地は再生エネルギー利用が向いていますが、さすがに限界を感じた……というか、コスパの悪さにいい加減キレ気味。

「一番電気を使うのはデータセンターだからさ。真横に専用の原子炉建てちゃったほうがよくない?」

そんな流れが来てますし、2030年頃には各IT企業が自前で発電する時が来そうです。

目次

Googleが小型モジュール式原子炉を7個お買い上げ予定

AI開発を支える電力を安定供給するには、もう原子力エネルギーに依存するしかない━━。

Googleは、スタートアップ企業のKairos Powerと提携し、米国に7つの小型モジュール式原子炉(SMR)を建設する計画を発表しました。

この提携により、2030年代末までに500メガワットの原子力エネルギーを追加することを目指しています。

Googleが発表した内容を箇条書きでいうと━━。

  • 小型モジュール式原子炉(SMR)を7個買って、自社の電力を賄う
  • 2030年代までに1個目が稼働予定で、残りは2035年までに完成予定
  • SMRからの原子力エネルギーを企業が購入するのは初事例

Googleのエネルギーおよび気候のシニアディレクターであるマイケル・テレル氏は、ブログ投稿で次のように述べました。

「複数の原子炉から電力を調達することで、コスト削減と技術の市場投入を加速させるために必要な、反復的な原子炉の配備を支援します。これにより、先進技術の恩恵をより多くの人々やコミュニティに広げることができ、これまでの取り組みを拡大する重要な一歩となります」

今の発電所だけでは、”これからの”AI技術を実現する電力が足りないと……。

不安定な電力会社に頼るより、自社の小型原子炉で賄えばカーボンフリーでサステナブルだし、ウィンウィンじゃね? ……みたいな流れ。

アメリカの地方都市は電力供給が悪い加減

アメリカは土地がでかすぎるのと、人がおおらかなおかげで、各家庭への電力供給もあやうい州や地域があります。

基本的に「大都市」以外は不意の停電も多く、電力網の老朽化も懸念されている。

沿岸部はハリケーンが壊して、内陸は竜巻が破壊していくし、かつ送電線はクソ長くて大雑把だから復旧に時間がかかる……など、全土への安定供給がされてない状態。

データセンターは都市部よりも郊外に置くことが多いので、電力供給が途絶えるとか、そもそもパワーが足りない状況は非常にマズい━━てか、機会損失が増えるから生産的じゃなくなります。

「ならデータセンターに原子炉置いて、自家発電の安定供給しか対策はないのでは?」

多くのテック企業は現在、この考えに行き着いていて、実際に行動している企業もあります。

Googleの他にも「発電所を買おう」と発想した企業

2023年9月には、Microsoftがペンシルベニア州のThree Mile Island発電所の再稼働に向け、Constellation Energyと協定を結びました。

また、3月にはAmazonがTalen Energyから、原子力で稼働するデータセンターを購入しています。

MicrosoftはOpenAIと提携しているし、AI技術でわりと先端に立っているのもあるから、電力の供給には敏感だったと伺えます。

Amazonも買っていることからわかるように、巨大すぎるクラウドサービスを持つ企業は、特にアメリカ本土で電力の悩みを抱えているみたいですね。

この考えは「化石燃料の発電と自然発電だけじゃ足りねぇ!」よりも、「従来より安全で安定した小型原子力発電の技術があるなら、これを地方にポンポン建てたほうがカーボンニュートラルなのでは?」の考えに近いと思います。

余った電力を周りに供給する計画もしているようですし、この流れは中国が後に続きそうですね。

注目されるスタートアップの「Kairos Power」はどんな企業?

「Kairos Power LLC」は、2017年に設立されました。

Kairos Powerは、カリフォルニアのアラメダを拠点とする、ミッション駆動のエンジニアリング会社で、クリーン、安価、安全なエネルギーソリューションの提供を目指しています。

技術と設計
  • 原子炉技術
    Kairos Powerは、フルオリド塩冷却の高温原子炉(KP-FHR)を開発しています。この技術は、コーティングされた粒子燃料と液体フルオリド塩冷却材、低圧プール容器を組み合わせたもので、米国の電力市場での天然ガスと競争できるコスト性能を目指しています。
  • モルテン塩冷却システム
    これらの原子炉は、セラミックのペブル型燃料とフルオリド塩冷却システムを使用して、蒸気タービンに効率的に熱を輸送し、電力を生成します。このシステムは受動的に安全で、低圧で運転できるため、シンプルで費用効率の良い原子炉設計が可能です
安全性と環境への影響
  • 安全性
    原子炉は受動的に安全な設計で、事故に備えてオペレーターの介入が必要ないように作られています。ロバストな燃料と低圧の冷却システムが特徴です。
  • 環境への影響
    ほぼゼロのカーボンフットプリントと低い水消費量が特徴で、変動する再生可能エネルギーと組み合わせて、真正にクリーンなエネルギーシステムを作ることができます

小型原子炉の商業モデルとして、初めて購入したのがGoogleです。

先進的な核技術への投資は明るい

先進的な核技術への投資は、米国内のコミュニティに直接的な経済効果をもたらします。

核発電は、米エネルギー省によると、他の発電源よりも最高の経済効果を持ち、高賃金の長期雇用を創出します。

2050年までに米国で200GWの先進核容量に達するためには、追加の37万5000人の労働者が必要と予測されています

ただ、懸念が残っています。

この計画には、Kairosが米国原子力規制委員会から設計および建設許可を取得する必要があります。

同社はすでにテネシー州でデモンストレーション用原子炉の承認を受けており、2027年に稼働を予定しています。

また、ニューメキシコ州アルバカーキにある開発施設で、核燃料を使用しないテストユニットを構築し、部品やシステム、サプライチェーンの評価を行っています。

ようするに、実用化の準備段階に入っているわけです。

まとめ:大陸の国だからこその小型原子炉か

小型モジュール式原子炉は、三菱重工業も開発を進めています。

日立製作所は事業化の一歩手前まで来ていますが、日本企業が国内展開できるのは、アメリカで実際に稼働がスタートしてからン十年後とかになりそうですね。

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