2023年に開学し、電動モビリティ分野の次世代人材育成を目指して期待を背負ってスタートした日本初の専門職大学「電動モビリティシステム専門職大学」があります。
しかし、わずか2年で学生募集を停止することが発表されました。
地域や時代の特色を生かした教育機関として期待されたものの、立地や認知度の壁に阻まれた背景や、設立の経緯、運営の課題について深掘りしていきます。
電動モビリティシステム専門職大学の概要
電動モビリティシステム専門職大学は、2023年4月、山形県飯豊町に開学しました。
日本で初めての専門職大学として注目され、自動運転技術や電気自動車(EV)の分野に特化した教育と研究を行い、「電動モビリティシステム開拓者」と呼ばれる次世代の人材育成を目的としています。
この大学では、電動モビリティに関連する技術や知識を4つの主要分野(電気自動車、自動運転技術、モータ制御、リチウムイオン電池)に分けて体系的に学べる実践的なカリキュラムが組まれています。
地域企業との提携も行い、企業実習を通して理論だけでなく、即戦力として業界で活躍できるスキルの習得を重視していました。
地域創生の目玉としての役割
電動モビリティシステム専門職大学が設立された背景には、エネルギー枯渇や地球温暖化といった世界的な環境問題への対応が急務となっていることがあります。
特に日本の自動車産業は「100年に一度の変革期」を迎えており、持続可能な社会を支えるための新たな技術や人材が求められています。
この大学の設立は、これに対応する一手として期待されました。
また、山形県飯豊町という立地も大きな意味を持っています。
この町は、自然に囲まれた環境を活かし、再生可能エネルギーの活用や地域資源を生かした持続可能な発展に取り組む地域です。
大学を誘致することで、地域の活性化を図り、地方創生の象徴的な役割も期待されていました。
しかし、結果としてこの立地が障壁の一つとなるとは……、関係者が予測してなかったかもしれません。
企業の支援と設備の充実—やる気は十分だったが…
電動モビリティシステム専門職大学は、地元の自治体だけでなく、国内外の自動車メーカーや通信企業からの支援も受けていました。
これにより、最新の教育設備が導入され、企業実習の受け入れ先としても、さまざまな企業が協力。産学連携による実践的なスキルの習得を目指していたのです。
さらに、大学は学生寮も整備し、遠方からの学生が安心して学べる環境を整備しました。
こうした取り組みからも、運営側がいかにやる気をもってプロジェクトを進めていたかがわかります。
しかし、これらの施設や支援も知名度や立地の壁を超えられなかった点が浮き彫りになっています。
募集停止に至った理由
募集停止のニュースを知ったネット上では、「知名度やろなぁ……」「立地だろうなぁ」という意見が多かったです。
これで初めて「そんな学校あるんだ」と知った方も多いのでは?
1.立地の課題
飯豊町は自然豊かで静かな環境にありますが、大都市からのアクセスが良いとは言えません。
山形県内でもアクセスが限られているため、特に遠方からの学生にとっては通学が難しい場所です。
交通の便の悪さと、周囲の施設に魅力がないのも、学生が入学をためらう要因となったと考えられています。
2.知名度と認知不足
電動モビリティシステム専門職大学は、業界関係者や一部のメディアでは注目されていましたが、一般的な認知度は低く、大学の存在すら知らない学生や保護者も多かったようです。
大都市の大学や専門学校と比べても、情報が十分に行き渡らなかった点が影響していると考えられます。
3.地方創生の理想と現実
電動モビリティシステム専門職大学の設立は、地域活性化と次世代産業の育成を目的とした「地方創生」の一環でもありました。
理想的には、電動モビリティ分野に興味のある若者が集まり、地域の産業を支える人材となることが期待されていましたが……。
地方での認知度向上、地域外の学生を惹きつけることは、想定以上に困難なことを思い知らされたわけですね。
今後の課題—日本の次世代技術教育に向けた提言
学生を集めたいなら、知名度を周知させるのが第一の施策です。
次に、モビリティ業界が今後の未来において、どれほど魅力的かつ巨大な市場かも認知してもらい、社会における重要性を広く周知させることも大切かと考えます。
1.知名度向上とリモート教育の導入
電動モビリティに興味を持つ学生層は増えているため、インターネットやメディアを通じた積極的な広報活動を行い、知名度を向上させることが重要です。
また、リモート学習を活用することで、学生がアクセスしやすい形で授業を受けられるような柔軟な体制を整えることも有益でしょう。
2.立地選定と学外での実務経験の充実
また、次世代の技術教育を担う機関が立地による不利な要素にとらわれないよう、大都市に拠点を置くか、業界の主要地で定期的に教育プログラムを提供することも検討すべきです。
これにより、地方での学生確保が難しい場合でも、学生が学外での実務経験を積みやすくなります。
3.産学官連携の拡充
自動車メーカーや通信企業などの出資者がいることは大きな強みであり、これをさらに強化することで教育の内容を時代に即したものに進化させていくことが可能です。
これにより、学生が卒業後に即戦力として業界に貢献できる人材となり、将来的な入学希望者を増やすことにもつながるでしょう。
まとめ:次世代技術の融合に挑んだ大学の教訓
この事例は、今後の教育機関の設立や運営にとって大きな教訓になりそうですね。
本記事の要点を次にまとめました。
- 電動モビリティシステム専門職大学は、2023年に山形県飯豊町に開学し、電動モビリティ分野の人材育成を目指した日本初の専門職大学。
- 設立背景には、エネルギー問題や地球温暖化などの環境問題対応と地域創生の一環としての期待がありました。
- 企業支援と最新設備を備え、寮の設置など環境整備にも力を入れたが、2年で学生募集を停止する事態に。
- 立地の悪さや知名度不足が、学生の入学を妨げた主要な要因とされる。
- 地方創生の理想と現実のギャップが浮き彫りに。
- 今後の提言として、立地や認知度向上に向けたリモート教育の活用や産学官連携の強化が重要と考えられる。
- この事例は、地方での新しい技術教育の課題と教訓を示し、未来の教育機関の設立に役立つといえる。
……正直いって、モビリティ専門学校にするほど、当該の業界が追いついてない背景もあると思います。
自動運転技術は自動車メーカーのブラックボックスだし、5Gや6Gを使ったコネクテッドカーも、通信技術の中身を知られることは、セキュリティ上のデメリットにしかなりません。
そういう背景もあるし、メーカーは独自で若い人材を集めて開発を進めているから、個人の意見は「設立が5年は遅いんじゃない?」と感じました。
だってもう自動運転は成熟期で、あとは法律が枷になっているだけだから、これから進歩のスピード感についていける人材が重要になると思います。
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