Featured image of post ワキガの社員対応で悩んだとき|社長・総務が取るべき正しいステップ

ワキガの社員対応で悩んだとき|社長・総務が取るべき正しいステップ

職場で「特定の社員の体臭が強く、他の社員が困っている」という相談は、非常にデリケートな問題です。安易に「退職」「配置転換」といった措置を取ると、ハラスメントや差別問題に発展するリスクもあります。ここでは、社長・総務として冷静に判断するための流れとチェックリストを紹介します。

問題の性質を見極める

まず、ワキガ(腋臭症)は医学的に「疾患」として扱われる場合があります。医師による診断で保険適用の手術(アポクリン腺除去)が認められるケースもあり、単なる「体質」ではなく「治療可能な症状」と位置づけられます。

チェックポイント

判断項目 確認内容
同僚からの相談が複数寄せられているか 個人感情ではなく職場全体の問題か
本人に自覚や悩みがあるか 話し合いが可能な関係性か
健康診断などの記録に特記事項があるか 医療的な根拠が存在するか
本人の業務遂行・人間関係に影響が出ているか 実際の業務支障の有無を明確に

「業務遂行や環境維持に支障がある」場合のみ、会社としての対応が妥当です。単なる「嫌悪」や「主観的な匂いの感じ方」では介入は避けるべきです。

本人への伝え方を誤らない

直接的な指摘は、人格否定やハラスメントと受け取られるリスクが高いです。**「本人の体質」ではなく「職場環境の改善を一緒に考えたい」**という姿勢が大切です。

コミュニケーション例

「最近、職場の環境に関していくつか声が上がっていて、もしかすると体調や体質に関係していることもあるかもしれません。健康面で気になることがあれば、会社として支援できることを一緒に考えたいです。」

**“個人攻撃ではなく、職場全体の健康管理の一環”**として話すのが基本です。

会社としてできる選択肢

治療を求めるような指示を出す場合は、あくまで「本人の意思」を前提に、合理的な支援措置として進めます。

対応オプション一覧

対応内容 実施主体 補足
健康診断・医師相談の推奨 総務・産業医 社内健康管理制度の一環として可能
部署異動・座席変更 人事 本人への配慮と職場バランスを考慮
医療費補助制度の活用 総務 全社員に適用できる形が望ましい
会社指示による治療(例外的) 経営判断 医師の診断・本人同意・業務上必要性が必須

経費処理・法的整理

ワキガ治療費を会社が負担する場合、**原則は「福利厚生費」または「給与扱い」**のどちらかに分類されます。

区分 内容 税務上の扱い
福利厚生費 全社員を対象にした制度化がある場合 経費(損金)計上可
給与扱い 個人のみ支給・特例的対応 給与課税対象(源泉徴収必要)

注意点

  • 美容目的(ボトックス・ミラドライ等)は保険外扱いで、経費算入が難しい
  • 医療的必要性が認められる保険適用治療なら、経費としての合理性を主張できる
  • 書面(診断書・申請書・同意書)を残すことが重要

社内ルールを整備する

再発防止と公平性を保つために、健康支援制度として明文化しておくのが最も安全です。

社内規定例(抜粋)

「会社は、従業員の健康維持及び職場環境改善を目的として、必要と認める医療的措置について助言または支援を行うことがある。支援の内容・範囲は、業務遂行上の支障・医師の診断・本人の同意をもとに個別に定める。」

個人の尊厳を保ちつつ、会社として"環境改善の責任"を果たす形にできます。

最終チェックリスト

項目 実施状況 担当
職場からの相談が事実として確認できた 総務
本人と冷静な面談を実施した 上長・人事
医師の診断または医療相談を勧めた 総務
会社支援の範囲(経費負担など)を明文化した 経営・経理
公平性・再発防止の社内ルールを整備した 総務
当事者・同僚のフォローアップを実施 上司

まとめ

ワキガの問題は、個人の尊厳・健康・職場環境の三つが交差する極めてセンシティブなテーマです。「退職」「異動」より前に、“共に働き続けるための支援"をどう設計できるかが、経営と人事の成熟を問われるポイントになります。

この問題に直面したとき、まずは冷静に状況を把握し、本人の尊厳を守りながら、職場全体の環境改善を目指す姿勢が大切です。法的リスクを避けつつ、誰もが働きやすい職場を作るための一歩として、この問題と向き合うことが求められます。