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「音楽のまち」浜松の矛盾。立派なホールはあるが市民の練習場所がない

浜松市は世界に誇る「音楽のまち」です。 ヤマハ、カワイ、ローランドといった世界的楽器メーカーが本社を構え、浜松国際ピアノコンクールには世界中の才能が集まります。アクトシティ浜松の大ホールは、プロの演奏家からも評価される素晴らしい施設です。

しかし、その足元で、地元の音楽愛好家たちが「練習場所がない」と悲鳴を上げている事実をご存知でしょうか?

1. 「ハコ」はあるが「スタジオ」がない

浜松の音楽文化を支えているのは、メーカーだけではありません。数多くのアマチュア吹奏楽団、合唱団、ジャズバンド、軽音楽部などの市民プレイヤーたちです。 彼らが日常的に活動するための「手頃なホール」や「練習スタジオ」が、今、圧倒的に不足しています。

「はまホール」喪失の代償

最大の要因は、長年市民に親しまれてきた「はまホール(旧市民会館)」の閉館・解体です。 アクセスが良く、使用料も安かったこの施設の代替となる場所が、未だに整備されていません。

現在計画されている「市民文化創造拠点(はまホール後継施設)」は、浜松城公園東側に建設予定ですが、埋蔵文化財の発掘調査などが難航しており、完成まであと10年はかかるという絶望的な見通しです。 この「失われた10年」の間、市民プレイヤーたちは練習難民として市内を彷徨うことを余儀なくされています。

2. 新野球場(ドーム)vs 文化施設

市民の不満に火をつけているのが、遠州灘海浜公園に計画されている「新野球場構想」です。

370億円のドーム案への疑問

県と市が進めるこの計画には、巨額の税金が投入されます。

  • ドーム案:概算建設費 約370億円
  • 屋外球場案:概算建設費 約70〜100億円

「プロ野球を誘致するためにドームが必要だ」という声がある一方で、市民からは冷ややかな反応が目立ちます。 「年に数回来るかどうかわからないプロ野球のために370億使うなら、市民が毎週使う文化施設や、ボロボロの既存施設の修繕に回してほしい」。 これが、多くの市民の偽らざる本音ではないでしょうか。

3. 浜松まつりとの温度差

浜松の文化といえば「浜松まつり」も外せません。 地域コミュニティの熱量は凄まじく、行政も多大な支援を行っています。しかし、騒音、飲酒マナー、寄付金の強要といった問題から、「ついていけない」と感じる層が増えているのも事実です。

「まつり」には熱心だが、静かに文化を楽しみたい「音楽」などのインフラ整備は後回し。 この文化行政のバランスの悪さも、市民の文化離れを招いている一因かもしれません。

4. 本当の「音楽のまち」とは

世界的なコンクールを開くことは素晴らしいことです。しかし、それはあくまで「ハレ(非日常)」のイベントです。

本当の「音楽のまち」とは、プロが来る街ではなく、市民が日常的に楽器を手に取り、街のあちこちから音楽が聞こえてくる街ではないでしょうか? 誰でも弾けるストリートピアノの設置は良い取り組みでしたが、それ以上に必要なのは、市民バンドが安心して練習できる防音室や、手頃な発表会の場です。

まとめ:見栄えの良いハコモノよりも、足元の土壌作りを

「音楽のまち」というブランドは、企業城下町としての看板としては成功しています。 しかし、それを支える市民文化の足腰は、練習場不足という栄養失調で弱っています。

見栄えの良い巨大なハコモノ(スタジアムやランドマーク)を作る前に、市民活動を支える地味なインフラ整備こそが進められるべきです。 そうしなければ、浜松から音楽の火が消えて、ただの「楽器を作るだけの工場がある街」になってしまうかもしれません。