Featured image of post 次世代のSEOはアクセシビリティの強化と包摂性

次世代のSEOはアクセシビリティの強化と包摂性

従来のSEOは検索結果に表示されやすくする技術が中心でした。しかし今後は「誰でもアクセスできるWeb体験」が評価されるようになると考えられます。

次世代SEOの方向性

技術的SEOの継続

ページ速度、モバイル対応、構造化データ、内部リンク整備。これらは引き続き基礎として必要です。これらの技術的要素は、検索エンジンがサイトを正しく理解するための基盤となります。

アクセシビリティの強化

次世代SEOでは、アクセシビリティの強化が重要な要素となります。具体的には以下のような取り組みが求められます。

  • 音声とテキストを同時に提供する
  • 動画には必ず字幕を付ける
  • キーボード操作やスクリーンリーダーへの対応
  • 色覚多様性への配慮(色だけで情報を伝えない)

潜在層の取り込み

アクセシビリティを向上させることで、以下のような潜在的なユーザー層を取り込むことができます。

  • 視覚障害者・聴覚障害者
  • 高齢者や多言語ユーザー
  • 健常者でもシーンに応じて音声/テキストを使い分け可能なユーザー

包摂性がブランド価値に

「誰でもアクセスできるサイト」という信頼感が、特にYMYL(Your Money or Your Life)領域で強い信頼につながります。結果的に新しいユーザー層を獲得できるだけでなく、ブランド価値の向上にも寄与します。

次世代SEOの展望

次世代SEOは「Search Engine Optimization」に加えて、「Sensory Experience Optimization(感覚体験最適化)」へ拡張すると考えられます。検索に強いだけでなく、誰もが利用可能で、感覚的にもアクセスしやすいWeb体験を提供することが鍵になります。

WCAG 2.1とは

WCAGは「POUR(パウア)」と呼ばれる4つの原則で構成されています。

知覚可能 (Perceivable)

どんな人でも情報を知覚できるようにすること。例として、画像には代替テキストを付ける、音声には字幕を付けるなどがあります。

操作可能 (Operable)

すべての機能を誰でも操作できること。例として、マウスが使えない人のために、キーボードだけで操作できるようにするなどがあります。

理解可能 (Understandable)

コンテンツやUIが誰にとっても理解できること。例として、入力フォームのエラーをわかりやすく説明する、難解な文章は避けるなどがあります。

堅牢 (Robust)

将来の技術や支援機器でも利用できるようにすること。例として、スクリーンリーダーや新しいブラウザでも正しく動作するコードを書くなどがあります。

WCAGの適合レベル

基準を満たす度合いには3段階あります。

  • レベルA:最低限のアクセシビリティ(必須条件)
  • レベルAA:国際的に推奨される標準。多くの国の法律やガイドラインはここを要求
  • レベルAAA:最高水準。可能なら目指すべきだが、すべてを満たすのは困難

WCAGのバージョン

  • WCAG 2.0(2008年):基礎となるバージョン
  • WCAG 2.1(2018年):モバイル対応や認知障害サポートを強化
  • WCAG 2.2(2023年10月正式勧告):フォーム入力や認知負荷の軽減にさらに配慮
  • WCAG 3.0(ドラフト段階):「Silver」とも呼ばれ、より柔軟で包括的な評価方法を導入予定

日本との関係

日本では JIS X 8341-3 という規格があり、これはWCAGをベースにした国内基準です。公共機関のサイトは原則としてこの基準への準拠が求められています。

まとめると、WCAGは「誰もが情報にアクセスできるウェブ」を実現するための国際ルールブックです。レベルAAを満たすのが現実的な目標であり、企業・自治体・教育機関の多くがそれを指標にしています。

WCAGとSEOの関係

セマンティックHTMLは検索エンジンとスクリーンリーダーの両方に効く

headernavmainarticleなどを適切に使うと、検索エンジンはページ構造を理解しやすくなります。同じ情報はスクリーンリーダーにも「ランドマーク」として伝わります。見出しタグ(h1h6)を論理的に使うと、検索クローラーは文書の階層を把握でき、視覚障害者は目次として利用できます。

代替テキスト(alt属性)は検索と音声読み上げで二重の役割

SEO:画像検索での流入や、ページテーマの補足に役立ちます。アクセシビリティ:視覚障害者に画像の意味を伝えます。適切なaltは「検索エンジンと人間の両方に情報を届ける」ことになります。

コントラスト比や可読性はUX評価にも影響

WCAG基準の**色コントラスト比(4.5:1以上)**を満たすと、誰でも読みやすくなります。読みやすさは直帰率低下につながり、SEOのユーザーシグナル改善につながります。

モバイルフレンドリーとWCAGは重なっている

モバイルでの文字サイズ、タップ領域、レスポンシブデザインはWCAGでも推奨されています。Googleのモバイルファーストインデックスとも整合性があります。

フォームやUIの分かりやすさはコンバージョン率に直結

labelが不足するとスクリーンリーダー利用者は入力できません。同時に検索エンジンにとっても「フォームの意味」が明確になり、リッチリザルトなどに活きてきます。

結論

WCAG対応はSEOの副作用的なブーストをもたらします。アクセシビリティを意識して作ったサイトは、以下のような効果が期待できます。

  1. 検索エンジンに正しく理解されやすい
  2. 離脱率が低く、滞在時間が長い
  3. 画像検索や音声検索にも強い

結果的にSEO順位にプラス影響を与えることになります。

つまり、WCAGは「人間と検索エンジンの両方に優しい設計ガイド」とも言えます。日本では「SEO対策」と「アクセシビリティ対策」がまだ別物として語られがちですが、実際は同じ方向に進むベクトルなんですよね。

次世代のSEOを考える上で、アクセシビリティは単なる「配慮」ではなく、検索エンジン最適化の重要な要素として位置づけられるようになると考えられます。